Wein

四月十一日(日)
朝食後プラハを発ち、オーストリアの国境を通過、約300キロ離れたウィーンへ。
到着後、ウィーン市内観光。シェーンブルン宮殿、ベルヴェデーレ宮殿など見学。
夕食はウィーンの森のホリイゲで。生演奏つきで盛り上がる。

四月十二日(月)
終日、自由行動。王宮やカールス教会など主な観光スポットをまわり、疲れると老舗のカフェでくつろぎながら、本場のザッハトルテを味見する。夜には少しドレスアップして、いよいよこの旅行のメインイベントともいえる国立オペラ座での観劇。出し物はモーツァルトの「後宮からの逃走」。予約してあった席にも満足、優雅でゴージャスな雰囲気を堪能♪


貴族的容貌

ウィーンといえば、音楽の都。
公園にはシューベルトやヨハン・シュトラウスの像が立ち、1869年、王宮のとなりに完成したウィーン国立オペラ座といえば、こけら落としがモーツァルトの『ドン・ジョバンニ』、マーラーやカラヤンに至るまで音楽界の超大物たちが活躍した、伝統ある世界の三大オペラ座のひとつ。
音楽のみならず、13世紀から20世紀前半までハプスブルグ王朝が君臨していたウィーンには、あたかもヨーロッパ文化の粋を集めたようなきらびやかさがあります。
マリアテレジア・イエローと呼ばれる黄色の外壁が鮮やかなシェーンブルン宮殿や、市の中心にある王宮が所蔵する大量の宝物や美術品はいうに及ばず、国会議事堂や市庁舎、寺院や教会などの豪壮なこと。そして、この街に魅せられてやってきた画家や作家たちが好んで行った、お洒落で優雅なカフェの数々・・・
漠然と我々が「あこがれのヨーロッパ」というとき、その「あこがれ」のすべてがこの小さな街にあるといっても過言ではないでしょう。それはもう、たとえばベルリンなどとは比べものにならない都会的な粋とか洗練、というものがあるんです。ウィーンの街は、貴族的容貌といったらいいんでしょうか、自分が美しいということを、自分でもじゅうぶんにわきまえている正統派美人、といった印象ですね。


王宮・宮殿


王宮や各宮殿には、それぞれ一日かがりでも見きれないほどの凝った部屋や調度品、美術工芸品のコレクションなどがあります。
ハプスブルグ王朝の女帝、マリアテレジアは次々と子供を産んでは、あちこちの国と縁結びさせることで、勢力を広げていくのですが、なかでも有名なのがあのマリー・アントワネット。フランス王ルイ16世に嫁ぎ、革命で処刑された人ですが、その桁違いな浪費癖と金銭感覚の麻痺を表すエピソードとして、「民衆は食べるパンがないといっています」と言われたことに対し、彼女が「パンがないならお菓子を食べればいいじゃない」と答えた、というものがあります。
現代の私たちの感覚では信じられないのですが、でも、いったんこの王宮を見学して、生まれ落ちたそのときから、彼女はこういう生活をしていたんだなぁと思えば、なんかそれもしょうがないかと思えてきます。悪気があって言ったわけではなくて、こういう王宮での生活しか知らなければ、そんなことも言うでしょう、という感じなんです。

ほんとに、以前もこのコーナーで書いたと思いますが、ヨーロッパにおける文化的な富や美の蓄積というのは、凄いものがありますね。まぁ、それをどう評価するかは、各人の考えにもよりますが、私など、率直に言って、羨ましいなぁと思います。
丹念に人が手をかけ、意匠を凝らしたものが、いわば、人間の生み出した歴史の一番汚れのない部分、歴史の上澄みとも呼ぶべきものが、そのまま大事にされ、価値あるものとして残され、受け継がれてきている。たんに、観光事業の財源というだけでなく、そこには確固たる価値が付与されているわけです。
もちろん、王宮だって、そこの宝物や絵画だって、強大な権力による大掛かりな搾取の構造があってはじめて成り立つものですが、その構造的な歪みや澱みを超えて、残された美そのものは、冷たいガラスの陳列ケースのなかにあってなお、無条件に人を感嘆させうる輝きをはなっている。そこに価値を認め、これを大事に保管しようというヨーロッパ人の執念は、そのものを見て、その美しさにうたれれば、素直に理解できるというものです。



ホイリゲ・狂騒の一夜


ウィーンという名の語源は、ワインであったと言われています。
街の郊外「ウィーンの森」には広い葡萄畑があり、摘み取られた葡萄は近くの醸造所でワインとなるそうです。ホイリゲというのはワイン酒場のこと。もともと、ワインをつくっていた農家がつくりたての新酒をその場で飲ませていたのが始まりだとか。
さて、私たちツアーの一行も、このホイリゲで夕食をとることになったんですが、これが思わぬ盛り上がりをみた一夜となりました。係の人に案内されて、大きなホールに並んだ席についたばかりの時は、他に客とてなく、なんとなくひんやりシーンとした感じでしたが、しばらくするとギターとアコーディオンからなる流しの二人組が登場。これが実に情緒たっぷり、テンポのいい曲からバラードまで巧みにこなしてしまうんですね。思わず聞き惚れてしまいます。やはり訪れる日本人客も多いのか、「上を向いて歩こう」などといった日本人おなじみの曲も飛び出して・・・・そのころにはもう、ワインはまわっているは、あとから陽気なスウェーデンの団体客が大勢で入ってくるは、そこにいるみんなで浮かれはしゃいで大騒ぎ。流しのメロディーを口ずさみつつ、人種を超えたフォークダンスの輪が。
まぁ、私たちは少し離れた隅の席にいたもので、その中には加わりませんでしたが、みなさん大変に盛り上がってましたね〜(^o^) スウェーデンの団体さんも、もう社会の一線からは引退した、いわば余裕のあるような方ばかり。こちらも私たち以外は似たような方が多いものですから、同じ年代の旅の者同士、人種は違っても手に手を取り合って、音楽とダンスに興じるさまは、まぁなんというか、平和というか、熟年パワー炸裂、という感じでしたねぇ。



ザッハトルテ


ザッハトルテとは、チョコレートスポンジをその上から分厚いチョコレートの層で包み込んだケーキ。ウィーンには、このケーキのオリジナルを出すカフェがあるんです。
そこは、超一流の老舗ホテル・ザッハの一階にあるカフェ。
昔ながらの製法がきちんと守られているというこのホテル・ザッハのザッハトルテですが、一度、裁判の種になったことが。それは、皇室御用達の称号を誇る老舗カフェ『デーメル』もまた、このザッハトルテのオリジナルを主張していたからなんですね。この争いに勝ったので、いまではホテル・ザッハのザッハトルテが、正真正銘のオリジナルということになっているわけです。
さて、実際にホテル・ザッハでそのオリジナルを食べてみました。
分厚いチョコに覆われたチョコレートスポンジは二段に分かれていて、間には薄くアプリコットジャムの層があります。お皿に盛られたその脇には、山盛りの生クリームが添えられている。おお、いかにもカロリー高そう。一口食べてみると、確かに美味しいんだけど・・・あまぁ〜いっ!

健康指向なのか、もとから薄口好みなのか、日本のケーキはけっこうお上品にできてますよね。柔らかくふんわりしていて、見た目は繊細で小ぢんまり、味はわりとあっさりめ。甘すぎてしつこいのは、太りそうだし、嫌われる傾向が。でも、向こうのケーキは、どーんとボリュームがあるうえに、なんかしっかりしてるんですよ。歯応え、味、ともにね。このザッハトルテもすごく甘いので、普通の女の子だと、二人でひとつ注文するぐらいで満足できる感じです。そのうえ、ウィーンでコーヒーを頼むなら、ウィンナーコーヒーと決まってるでしょ。これまた生クリームがどっちゃり。ここの人たち、よく糖尿病にならないなぁ、などと、変なところで感心してしまいますね(~_~;)



超ゴージャスなオペラナイト


さて、私たちが今回の旅の重要イベントとしていたのが、ここウィーンの国立オペラ座での観劇。もちろん私が言い出したことで、夫は最初、あんまり乗り気ではなかったんです。彼にしてみれば、オペラが嫌だというより、スーツを着てお行儀良くしていなければならないことが嫌なんですね(~_~;) リッチなムードに弱くて、ホテルやレストランでも、お金のかかった豪奢な場所にいると、なんとなく落ち着かなくなってしまう我が夫。それを私が、新婚旅行の記念だからと、なだめすかしつつ、旅行社でチケットの手配をお願いしたんです。なかなか取れなくて不安になりましたが、けっきょく、手数料を除くと、かなりいいボックス席のチケットが約九千円でした。日本でウィーンフィルのモーツァルト・オペラなど観れば、同じような席でいったいいくらかかることでしょうね。そして、オペラ座それ自体の、まるで美術館か宮殿のごとく優雅な雰囲気を考えると、これは格安といえるのではないでしょうか。音楽の好きな人にも、私のようにたんなるミーハーな人にも、オススメです。同じツアーの方々は、私たちが日本からチケットを予約してきたというと、「へえ、わざわざ」と感心されてましたが、何人かの方は現地でチケットを買ったようです。でも、やはり見ていると、当日になって買うのでは、当然のことながらあまりいい席は確保できないようですね。

さて、オペラ観劇!と意気込んではみたものの、まったくシロウトの私たち。この日のために、CDまで買って予習しましたが、それでも、歌詞の対訳ノートを現地まで持っていき、「いまどこやってんの、さっぱりわからん」などということがないように、暗いなかでそれをちらちら見ていました。これは、やってみてよかったと思います(~_~;) わからないと、退屈ですからね。
服装のマナーですが、「できるだけドレスアップで」と本に書いてあったので、夫など不安がっていました。旅行社の人に聞くと、男性ならスーツにネクタイ、女性ならスーツやワンピースでじゅうぶんとのこと。アメリカ人観光客などジーンズにスニーカーで入ったりするので、現地の人々からヒンシュクをかっている、せめて日本人観光客は、そういうことがないようにしたいですね、ということでした。
実際に行ってみると、それはもうさまざまです。オペラの幕間には、瀟洒なロビーにしつらえたバーが、いろんな人たちでいっぱいになるんですが、私の観察したところ、スーツ姿で談笑している紳士、シャンパンを片手にイヴニングドレスを着たマダムもいれば、それこそカジュアルな格好の若者たちもいて、けっこうリラックスした感じです。でも、やっぱり、せっかくの機会だから、この際、できるだけドレスアップしたらいいんじゃないかと思いますね。私は明るい春色のシンプルなスーツで行きましたが、どうせミーハー観劇なんだし、エスコートしてくれる夫がもっと、そういう「ゴージャスごっこ」も楽しめる人なら、もう少し派手にしてもよかったと思います。ま、こういうことは、カップル揃ってやらないとね。マナーというより、気分の問題のようです。

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