No. 2 = 西野友年×まりねこ

★将来性を求める学生は・・・

西野;
小谷さんとの対談 読みました。学生 (主に大学 4 年生) の相手をしていると、
次から次へと「科学の最先端」について質問されて、最後は「問答の不毛さ」に
辟易してしまうのが通例なのですが、この対談、うまくまとめてありますね〜。

まりねこ;
ありがとうございます(^^)
半分以上は小谷さんのおかげですけどね。
学生さんの質問、というのは、どういうものなんでしょう。
希望に満ちた、「あれもできるの?これも?」というやつなのか、
それとも、もう少し懐疑的なものなのか・・・



研究テーマを選ぶ時に「超弦理論はどうですか? 」
「超伝導はどうですか? 」「サイバーグ理論はどうですか? 」
と、片っ端から説明を求める類いの物。あまり建設的な議論ではありません。


そうか、きっと、学生さんも「将来性が保証されてそうなもの」を
やりたいんでしょうね。気持ちわかりますが、それもずれてるような。
本来、自分が夜も昼もずっとやらなきゃいけないことなんだから、
そういう保身的な計算よりも、情熱がまず湧き起こる対象であることが、
望ましいはずですものね。



マーフィーの法則: 将来性を求める学生は、潰れる (出典ナシ)
今までの経験で行くと、将来性を過度に気にする学生は潰れます。
落ち着いて学習出来ないんです。性格も才能の内ですね。
私の友人なんて、叩き潰しても物理だけは続けるタイプなものだから、
回り道をした割には、マトモな大学のマトモな職についてる。


わかる気がします。きっと、そうでなくては駄目なんでしょうね。
もちろん、人に受け入れられ、認められることをしたい、という
気持ちは大切なんですけど、なんていうか、そこに「すりよって」いくと
いけませんね。このへん、芸術と研究は似てると思いますよ(^^)
でも、物理の研究なんて、考えるとすごく難しそうですね〜(^^)
きっと、ずば抜けて優秀なアタマがないと、できないんでしょうねぇ。


いや、どちらかというと、ショーもない事にこだわって、日常生活に支障がある位の
アホウが物理には似合ってるんです。



・・・は?


数理系の人で、特に「頭の中の推論が速い」人は、
「当たり前のことをしゃべらない」ので、凡人から見ると非常に無口に見えます。
勿論、普通な感じの人も居ます。
共通しているのは「ショーもない事にこだわる」点で、
例えば道を歩いていて「小さな穴」をみつけたとしましょう。
普通なら無視して通り過ぎる所ですが、物理人は「おや??」と思ったが最後、
「どうして、こんな穴が出来たんだ? この穴はどこまで続く? ちょっと中を
のぞいてみよう!! 」
という思考回路に従って、立ち止まってしまうのです。



はあ・・・そんなものなんですか(~_~;)


★産業科学批判

ところで、今日、エコ・ブームまだ衰えず、環境ホルモンも騒がれ、科学技術、
およびその産物について批判することは、山ほど行われています。
私自身にもかつては、そういう気分がありました。
でも、現役の研究者が、いま、何を考え、何を志しているか、ということは、
一般に向けて、やさしい言葉で語られる機会が少なすぎると思います。
一般の人が、科学およびその産物、または科学者というものを、無批判に
賛美するか、こきおろすかという態度に出がちなのは、やはり、
わからないから、の一語に尽きると思うんです。



科学批判で最大の論点になっているのは、経済性に基づく産業科学の分野ですね。我々基礎科学からも、悪い物は悪いと指摘して行かないといけないと
日々考えています。
公害にせよ、原子力発電にせよ、人間に害をなさない様にしようと思えば
出来るのです。但し経済的に立ち行きません。
それで、純粋科学 (善玉? と言えなくもない) から少し外れた所に
工業・経済・政治が絡まっている所があって「環境を少々破壊するけど、
万人の生活向上の為には、まあエエか」という判断の下、色々と生産活動が
続いているのです。
問題は、誰が判断するのか? という所。
一人一人が独立の地球を持ってたら、それぞれの知識に応じて好き勝手に
すれば良いのですが、そうは行かない。大抵は産業科学なんて知らないし、
高度に政治的 (いや官僚的) な所で判断が下る。


判断するときに、誰にも確かなことなんてわからないじゃないんですか。
たとえ科学者だって、研究の結果が実験室をはなれたら、
どうなっていくのかはっきりわからなくて不安じゃないですか?
政治家や官僚はもとから神経図太いし、専門的なことは知らないので
まあ好きにするでしょう。でも、研究した本人は一番よくわかっているでしょ、
どこが弱点だとか、まだ何が足りないとか。完全なものってないし。
例えばフロンガスだって、こんな大きな問題になるとは思われてなかった。
そのあたりを考えたら、自分の研究成果がどう世に出ていくか、というのは、
気になると思うんですけど。



科学・工学技術の研究者が、その波及効果を理解しているか、というと
「全然理解してない」のです。


えっ・・・理解していないとは??


フロンガスを例に取ってみましょう。
フロンの物理的な性質は、古くから知られていました。常温に近い温度で、
気体から液体に自由に移り変わる物質として。また、少し気体を吸ったり、
少し液体を口にしても、翌日にお腹をこわしたり体に蓄積される事は無いので、
一応「無害」な物質と思われていました。これは物理屋の視点です。
化学や医学的な見地からも、特に有害とは思われていませんでした。


ふむふむ。


さて、こういったフロンの性質は、冷却に向いている事が工学屋さんによって
証明され、冷蔵庫やクーラーに爆発的に応用されました。
この時点でも、誰もフロンの災いなんて知らなかったのです。
これは物理工学屋の視点。


はあ。


やがて、壊れた冷蔵庫などからフロンが放出され、成層圏に貯まりこんで、
オゾンが破壊されはじめて、はじめて危険性に気付いたのです。
最初に気付いたのは地球科学屋さん。人工衛星やレーザー技術が無かったら、
紫外線が増え始めるまで気付かなかったかもしれない。


ほんと、危ないものを作るのも科学なら、その危険性に警鐘を鳴らすのも、
やっぱり科学なんですよね。



さて、フロンが危ないとわかったのが 10 年ほど前。
そこから先は、設備投資をしたくない電気屋に支えられた各国の通産省と、
地球科学屋さんを擁する各国環境省との戦い。ここで経済的な視点が入ります。
但し、最新の経済学的な視点ではなくて、短期的利益に重点を置く
(つまり決算期を乗り切る) ドンブリ勘定的視点ですが。
この間にフロンの放出量はン割は増えた。
まあ、そうこうする内にようやくフロンの使用を取り止める事になったのです。
見ておわかりの通り、皆さん専門バカの集合体で
「他のことはあまり気にしてない」のです。
総合的に環境を考える「専門分野」が、ごく最近になって勢いを得ているのは、
こういう状況を打破するため。


でも・・・なんか怖い話ですよね。
研究して、開発されたものが、どんどん私たちの身の回りに影響を
及ぼしていくのに、結局はその全体を俯瞰できる立場の人が
いなかったとは。まるで自転車操業ですね。



金儲けして、幸せや若さが去って行くようなモンです。
人生全体を見て現在を過ごす人が居ないように、人類ン千万年の歴史を
見越して現在の生産活動をする人は居ません。
但し、経験則として我々が学びつつあることがあります。
「自然に (大量に) 存在しないものは、例え無害であっても身辺にバラまかない
方がいい」という事です。
アスファルト (元来地中のもの) を地表に被せるとか、石油を炊く (?) とか。
これまた、常に「今を生きる」人々の欲望と、将来的なツケのバランスですが。
そういう訳で、何か作ると未知の危険が常につきまとうのですが、我々に
可能なことは「同じ過ちをおかさない」ことです。
この点を踏み外したら、誹謗されても仕方ないです。
身から出たサビ。
無意識に妙な物をつくり出したら、その時に「科学者 PL 法」なんて適用される
時代が来ない事を祈ってます。


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