「オフコース1982年6月30日武道館コンサート」

オフコース(特に小田さん)については、「聞いて!(53)」の「時は、キラキラ」でも
書きましたが、ちょっと懐かしくなってネットでいろいろ関連サイトを見ていると、
どうも1982年6月30日の武道館コンサートライヴというのが、ひとつの「伝説」として
ファンの間に存在していることを知りました。
これは、オフコース五人時代の最後のコンサートですが、なんとなくもう解散の噂が
流れていたこと(実際はヤスさんが抜けただけで、その後はオフコース四人時代に)、
小田さんが歌っているときに感極まって泣いたこと、いろんな要因で武道館の中には
ある種の悲壮感というか緊張感が漂っていたらしいんですね。異様な盛り上がり。
元ファンの私にしてみれば、二十年もの月日たってから初めて知って、
「へー、あの小田さんが泣いたぁ?ふうーん」って感じですよ。

いやー、あのころそんなコンサートのことよりも私の印象に残ってるのは
あの変な曲、「I LOVE YOU」がシングルリリースされて、
「♪ああ、はやく九月になればー」って、意味不明やん、とか思ってたら、
そのうち小田さんが結婚して籍を入れたと、九月に新聞ネタになったとき、
ファン心理はもう薄れかけてたけど、
(なにせ同時代に活躍していた坂本龍一のほうがビジュアルよかったし、
山下達郎のほうが顔はともかくお洒落だったし、本格的に音楽のレベルを
評価するなら、それこそ洋楽だと思ってた)
「けっ。小田さんって、そーゆー人だったわけぇ?
♪ああ、はやく九月になればーって、けっきょく自分の結婚のことかいっ。
馬鹿みたい。よく恥ずかしげもなく、あんな公私混同ソングつくれるな。
あー、キモッ!もうこっちが赤面するわ!」
と、新聞握り締めてもんどりうったことですね。
やっぱ、まだ十代なかばの私にとっては「アイドル」だったわけですから。
自分好みの「ストイックで繊細な大人の男性」のイメージを投影する
存在だったので、「結婚うれしいなぁー、はやく九月になぁれ、なんて、
デレデレした歌(そのときはそういう歌だと信じてた)なんかつくって、
もー、三十過ぎてなにこいつ、ああ、裏切られたーっ」てね(~_~)
身勝手だけど、アイドルのファンって、所詮そんなもん。
ひいきの女性アイドルが男の部屋から朝帰りして週刊誌ネタになった心境、
「清純派だと思ってたのに、男といちゃいちゃしてたんかいっ!」
みたいな感じですか。
ほんと、それからオフコース好き、とか言えなくなりましたよ。

私の中で「I LOVE YOU」はしっかりと封印された曲になりましたけど、
(ちなみに「YES-YES-YES」も結婚デレデレ曲に思えるので大嫌い)
でも、それ以前の曲はまだ好きだったりするんですね。
特に、ヤスさんと二人時代のアルバムのなかには、シングルカットは
できないようなものに、お洒落に凝った曲がけっこうあったりして。
この歳になると懐かしさも相まって、たまに聴いてみる。
(私の考えでは、オフコースの音楽的な真髄は、小田・ヤス二人時代の
アルバム「ワインの匂い」〜「FAIR WAY」までのなかにあると思います)
ネットで濃ゆいオフコースファンがつくったページを徘徊したり、
いろいろしてるうちに、「さよなら」でブレイクして、続く短い黄金時代、
哀しいヤスさん脱退、光と影の四人時代、という時系列が、甘くおぼろげな
記憶としてでなく、関心を持って考察する対象として浮かび上がってきました。
うーん、とりあえずコアなファンのみなさんがトラウマになっているらしい
伝説の「1982年6月30日の武道館コンサートライヴ」を見てみたい。
そう思ってたら、あら、あったじゃありませんか、レンタルショップに
その問題のDVDが。

さっそく借りましたよ。きゃは♪
「ほんとに泣いてるのかなぁ、小田さん〜?」
もうこっちも大人ですからね。三十半ばの男がステージで簡単に感極まって
泣くなんて、信じられない。
小田さん小田さんと騒いでいる私に呆れた夫が、その疑惑に拍車をかけます。
「いやぁ、小田って黒いやっちゃなー。同情集めるために嘘泣きまでするんか」
「けっきょく、いまいち売れん鈴木を追い出すように仕向けて、手っ取り早くソロで
稼ぎたかっただけなんちゃうか、ほんま、鬼畜やな」
いや、私もそこまで思わなかったですが、そういう可能性もないわけじゃない、
とは認めます。ショービジネスの世界は厳しいでしょ?
なんせ、ソロになっての代表曲「ラブ突」「伝えたいこと・・・」とか、
音楽としてみれば思いっきり商業路線で、札びらがちらつく駄曲ですもん。
「クリスマスの約束」で「自己ベスト」が売れたとやたら嬉しがってたのも
セールスの数字だけにとらわれてるみたいな印象もちましたし。
「あー、商売人になったんやなぁ、二人時代はもっと純やったのに。
まあええか、この人、アーティストっていうよりアイドルやもんなぁ」
と思いながら、それでもなんだかワクワクしてDVD見ましたよ。
時の流れを感じさせる、ちょっとざらついた映像を。

まず感じたこと。
「うわ、当たり前だけど、メンバーみんな若い〜!!」
「いやー、時代を感じる〜!!服がださい〜」
「小田さんの髪の毛がちゃんとある!」
「あんなに汗だらだらになるんやったら、もっと涼しいカッコでやれば?
キーボードに汗がぽたぽた落ちるがな」
「MCこれだけ?愛想なしやね。しかし、さすがに歌声はきれいに伸びてる」
それで、ライヴ中盤あたりの「言葉にできない」が一番見たかった涙シーン。
「ラーラーラー、ララ・・・」
おおっ、声が詰まったぞ!(ワクワク)
なんとか歌を続けようとするも、小田さん、文字通り「言葉にできない」状態。
マイクに額をつけてうなだれてます。
手拍子と、きゃーきゃーと女性客の喚声がうるさい!
小田さん、気を取り直してマイクに向かうけれど、でてくる歌声はボロボロ。
アップになった顔は泣いてました、確かに。涙出てましたもん。
初めは「汗が目にはいったんじゃない?」とか思いましたけど、いやいや、
伏し目になった瞬間、確かに涙が流れ出すのが見えます。
そんなにボロ泣きじゃないですけどね。でも、やっぱり泣いてる〜♪
なんか、人が泣くのを見てこんなに嬉しくなるなんて、私、おかしいですか。
だって、可愛かったんだもん。
うん、二十年まえなら、一緒に泣いてたかもね。
でも、そのころの小田さんの歳を、私自身がもう超えてますから。
いやーん、可愛いっ〜♪ってのが正直なところ。

その部分、何回もリピートして見ました。スローにしたり、コマ送りにしたり。
ヘッドフォンで音量大きくして聴いてもみました。
結果。あれは「嘘泣き」じゃない。「マジ泣き」と認定。
声のひっくりかえり方とか、途中で一瞬、鼻をすするところとかですね、
決め手は。涙だけなら演技でもでるだろうけど、声の乱れを聴いてると
これは演技じゃないって。やっと歌いおわって照れたように笑うところも、
「あー、我慢できなかった、やれやれ」みたいな雰囲気で真実味がある。
ずっと後に、小田さん自身がインタビューで答えてるみたいに、感極まって、
というのがほんとなんでしょう。
「そのまえの『心はなれて』がやばいと思ってた、でも、なんとか感情的に
ならないように抑えて、ほっとしたら次の『言葉にできない』で、
一気に泣きモードに入っちゃった」みたいなこと言ってましたからね。
で、「心はなれて」もよく聴くと、後半の「二人で追いかけた青い日々が・・・」
あたりから、もう「必死だな」って感じです。
そもそもしつこく聴くと、そのずっとまえの「哀しいくらい」でも、
そういう気配はあるように思います。

映像では、小田さんが泣いてるとき、ベースの清水がちらっと映ってて、
「やっぱり泣いてもうた、小田さん、あーあ」みたいな表情でしたが、
肝心のヤスさんが映らないんですよね。
清水なんかどうでもいいから、そのときのヤスさんの顔を映して欲しかった。
なにしろ、この舞台を最後にオフコース脱退するんですから。
小田さんが「感極まって」泣いてる理由は、もちろんそのことだもん。
ヤスさんもまたインタビューで、あのライヴで最も印象に残ったことは
「小田が泣いたこと」と答えてますが、理由についてはノーコメント。
百聞は一見にしかずじゃないですか。
なんでヤスさんを映さなかったんでしょうかね。もったいない。

しかし、やっぱピュアじゃないよな、マジ泣きも平気で仕事のネタになるんです。
いったん控え室に戻ってから着替え、拍手に応えてステージに出てくる。
そのアンコール「YES-NO」の「ああ〜、時は音を立てずに二人つつんで・・・」と
小田さんソロパートで歌う部分、ミキサーが小田さんの声のボリュームをわざと
徐々に小さく絞ってる。小田さんは多分少し声を落とした程度でしょ。
「言葉にできない」の小田マジ泣きで観客が一気に盛り上がったからって、
「よっしゃ、また泣きそうに見せかけてキャーキャー言わせたろか」
みたいな魂胆みえみえ。
で、コロリとのせられて再びキャーキャー盛り上がる観客。
ヤスさんの心中やいかに?と思いました。
そもそもこれでお別れなんだから、もっとヤスさんに華をもたせてあげても
よかったと思うんだけど、さりげなくね、でも、この日もやっぱり
オフコースはオダコース、あいかわらず。
あの涙とひまわりのバック、We are over, thank youの文字で。
なんだか、「出来すぎ」な感じも。

「言葉にできない」がオフコースの全曲なかでそんなに飛びぬけて
いい曲だとは思いませんが、まあ、ファンにとってはあの涙が大切なのね。
あれがすべて。
私もあまりに可愛いので、とうとう買っちゃいました、DVD。あは。
いやー、そんなに高くないし、記念に持っててもいいかなぁって。
夫には呆れられましたが。
で、レンタルしたのを返しにいくと、この武道館ライヴの一年前、
NHKの「若い広場」という一時間番組にオフコースが出てたんですね。
内容は、主に、ニューアルバム「over」のレコーディング風景と、
メンバー、とくに小田さんへのインタビュー。
これも、ファンの間では「伝説の」番組らしい。
ということで、調子に乗って借りてきました。

これがまた面白い。
どう面白いかというと、「over」のレコーディングしてるときは、
まだ秘密にされていたけれど、鈴木康博脱退はきまってたわけです。
正確には、そのまえのアルバム「We are」をつくるまえから、もう、
ヤスさんは、脱退の意向を示してたというんです。
そんなバンド内がゴタゴタしているときのレコーディング風景。
メンバーたちのちょっとした言動の数々。インタビュー。
「We are」、「over」は、そのあたりをふまえて聴くと、なかなか
深読みし甲斐のある曲ばかり。
山際淳司のオフコース本「Give Up」には、ヤス脱退・解散に向かう様子が
ルポされているということですが、ファンが一番知りたい小田・ヤスの
そのときの感情のもつれにはあまり深入りしていない、ということです。
読んでないのでわかりませんが、複数の人がそう評しているのだから、
そうなのかもしれません。
でも、私たちが知りえないそのときの二人の生々しい感情が、作品のなかに
昇華されてると思うし、この「若い広場」の映像にしても、そのことへの
想像力をかきたてられますね。

ということで、次回のレビューはDVDになったNHKの「若い広場」と
アルバム「We are」、「over」と予告しておきます。
あのとき、小田さんとヤスさんのなかにどんな感情が吹き荒れていたか?
現実にある材料を元に想像力を駆使して検証、というより妄想?していきます(~_~)


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