CALLING FROM SANDIA (3)

アメリカ単身赴任も早いもので半月あまりを過ぎ、うちの夫は徐々にですが現地での生活に慣れ始めた様子。私がドタキャンしたので、彼にしても戸惑ったことはいろいろあったでしょうが、とにもかくにも日本人の姿が誰も見えないようなところで、よく頑張っているなぁと思います。向こうでプロバイダーに入会したので、手持ちのパソコンで日本語のメールが書けるようになりました。彼をご存知の方はたまにメールでも出して、泣き言を聞いてあげてください。いつもの大学宛てのアドレスで結構です。

夫は、勝手知ったる場では「ど」がつくほどあつかましく、無神経に何でもべらべらとよく喋る人ですが、勝手のよくわからない場ではしおらしく、人見知りする性格らしい。要するに、なんですか、内弁慶ってヤツ? そういうのって、海外ではやっぱりソンですよ。特に男なら、なおさら。誰も男なんかにわざわざかまってくれませんからねー。
海外では、もう笑顔で場に割り込んでいくに限ります。いちいち相手にどう思われるかなんて、深く考えてても仕方ないでしょ。考え方や習慣も違うし。どうせ定住するわけじゃなし。ただただもう、フレンドリーを笑顔で表現するのみ。私は、「こっちはガイジンなんだから、ちょっとぐらい変な喋り方でも、無作法でも、笑って許してくれるよねっ」なんてあつかましく期待してますから、海外のほうがかえって気楽かもしれないと思うんですが。まぁ、それでも、ある程度の語学力がなければつらいのは確かですね。英語、上達してるの?と、夫に聞けば、どうもそれが一番の悩みの種らしいです。でも、こればっかりはねー、地道に努力するしかない。語学習得のとっておきの早道は、ネイティヴスピーカーと恋愛をすることだと言われてるんだけど、それはさすがに、この寛大な私としても許すわけにはまいりませんからね(~_~;)

リバモアというところは、けっこうサンフランシスコから離れていて、なんていうんでしょう、都市というより町という感じでしょうか。彼の報告からするに、普通の市民が普通に暮らしているところだと想像してます。危険もないかわり、あまり何の刺激もないようなところらしいですね。
日本人がいること自体が珍しいような町です。
これは笑える話ですが、夫がスーパーにビールを買いに行くと、レジで身分証明書を提示するように言われたとか。なぜかと聞くと、未成年にはお酒を売ることができない、と・・・えーっ、未成年〜!?
うちの夫は生来の子供じみた性格のせいか、多少若く見える人ではありますが、もうれっきとした「おじさん」っていってもいい歳ですよ。現に、甥っ子たちからは、おっちゃん、おっちゃんって呼ばれてますしね。いや〜、向こうの人にとっては、東洋人の年齢って、わからないんですねぇ。驚きます。とにかく、彼が自分の歳を言うと、向こうもびっくりしたのかレジ係の店員に大笑いされたそうです。
でも、サンフランシスコやロスの市内だと、中国人街もあるし、日本人もいっぱいいるし、そんなことでいまさら驚くはずないと思うんですけどね。ガイジン(日本人)が珍しいということは、それだけ田舎町だということでしょうか。これで私が行ったら、なんと思われるんでしょう? 何も知らないご近所の人からは、「あの家では東洋系のガイジンの子供が二人で暮らしている」、などと噂されるのでしょうか(~_~;) まぁ、それも面白そうですね。


教えて!

メールの広場に掲載させていただいた大平さんとの話で思ったんですが、文系の人間でも理系的な事柄に関心を持ってる人はけっこういると思うんですよ。
たとえば女の子はメカに弱いというのが通説ですが、これだけパソコンが普及してくると、関心がないとか機械音痴だから、ともいってられません。現に私自身も、それまで照明の電球ひとつ自分で取り替えたことがなかったくせに、ややこしい電話の接続とか設定にいちいち苦労して、マニュアルを読んだり、ショップの人に電話で聞いたりしつつ、メールの送受信やネットサーフィンができるようになりました。そのときは、手取り足取り教えてくれる男性が身近にいませんでしたからね〜(~_~;) うちの弟は一時、情報処理関係の会社に勤めていたくせに、まだインターネットには接続してなかったんです。意外なことでしょうが、理系の父も最近ネットに参加したんで、なんと我が家では私が一番初めにインターネットなるものに取り組んだことになるわけです。

いろんな手続きもややこしかったけれど、そのまえにパソコンの使い方で、私がまずはじめにわからなかったのは、「メモリ」と「保存」。せっかく苦心惨澹して書いた文章でも、それを保存しておかないと、電源オフと同時に無常にも消えてしまう・・・何で?と思いました。メモリって、それ自体記憶のことでしょ? それと保存とどう違うの?って。弟に聞くと、「メモリは一時的な記憶だから、それをハードディスクに書き込んでおかないと、消えてしまう」とのこと。私はメモリとハードディスクの違いがそもそもわからなかったし、ついでに言えばパソコン本体とモニタの違いもわからなかったんですが(~_~;)
弟になおもしつこく聞くと、「メモリってのはぁ、たとえば机のうえのスペース。そこでいろいろ作業するやん。文章書くとか計算するとか。でも、最後にそれを引き出しにしまっとかんとあかんわけ。その引き出しをハードディスクのフォルダっていうねん。とにかくそれが保存ってこと。それをしなかったら、今まで作業してた机のうえのもんは、電源オフで全部なくなってしまうねん」と。
私は、そのときはパソコンってなんちゅう不便な機械やねん、保存ぐらい自動的にしてくれたっていいのに、と思いましたが、弟の説明でなんとなくそういうもんかと理解できました。

さて、私がまだ夫と知り合ったばかりの頃は、なにしろ大学で物理の研究なんかしている人というので、好奇心でいろいろと質問してみました。「宇宙の端ってどうなってるの?」とか、「原子は結局、何でできてるの?」とか、子供みたいな質問ですけどね(^^) そうしたら、彼はヒジョーに困っていました。
彼にしてみれば、その質問にどこからどうやって答えたらいいのか、わからないというんです。で、どうのこうのと説明してはくれるけど、それがなんかごたごたしていて、うちの弟の「机と引き出し理論」ほどすっきりとわからないんです。私には、それまで普通に喋っていた彼が、そういうときだけ急に「ええと、・・・は・・・でですね、・・・になるわけですよ、それでですね・・・」などと講義口調になるのが単純に面白かったんですが、肝心の説明というのはさっぱり要を得ないなと思いました。で、傲慢な私は内心、彼自身がほんとにわかってないから人にわかるように説明できないんじゃないかと疑ってたんです。私は常々、難しいことを難しくしか説明できないのは自分自身がまだそれについてよくわかってないからだ、と思ってますからね。
ある日、彼の部屋へ行ってみたら、本棚にはいろいろ難しそうな本がずらっと並んでいる。「相対的量子力学」とか「素粒子論」とか、たぶん一冊が何千円もするような専門書なんですが、ちらっと中を見てみると、私にはやっぱり三行も読めません。うーん、この人が研究者をやっているというのはどうも事実らしい、などと思いつつ、「すごいですねー。これ、全部読んで、ほんとにわかるんですか?」と聞いてみたんですよ(~_~;) そしたら彼は笑って、「うん。(アレルギー性鼻炎で)鼻がつまってないときはわかる」と。
・・・失礼なことを聞く人もいるもんなら、妙ちくりんな答え方をする人もあったもんです。

今でも、「この人、これでもほんまに科学者の端くれかいな」と思うことはあります。ほんとに日常的な物理に関する事柄で、これどういうこと?って聞いても、さっぱり答えられなかったりしてね。打てば響くように、何でもサッと教えてもらえると思っていた私はがっかりします(-.-)
でも、だんだん私もわかってきたんですが、科学者といっても自分の研究している分野以外については、案外しらないものだし、また、科学者には「よくわからないことは断言しない」という性質があります。知識にそれだけ厳密さを求めているんです。それに、今現在、どうしてもアタマに詰め込んでおくべきことは、自分の研究していることについての先端的な知識なので、広く浅くという博学的な知識の持ち方はしていないんですね。で、大学で彼が相手にしているのは「物理について、ある程度は高度な知識をもっている」ということを前提とした理学部の学生、院生ですから、そういう仲間内では話も通じやすいんですが、私のようなズブの素人に何か聞かれても、まず私がどれだけそのことについて知識があるのかわからない。私の物理についての知識なんて、高校時代のはじめぐらいからストップしてますから、正確に説明しようと思えば、それこそ何時間も講義しなくちゃいけないようなことを、「だからさぁ、結局どーゆーことよ? もっと簡単に説明できへんの?」などと言われても、彼にしてみれば困るんだろうと思います(^^)

あの東海村での臨界事故は恐ろしいニュースでしたが、「臨界」なんて聞き慣れない言葉を理解している一般の人が果たしてどれだけいるでしょう? 「被爆」「放射能」なんて言葉が散りばめられていると、原爆を連想して、とにかく怖いということはイメージできますが、いったい何がどうなって「被爆」するの?とか、そもそも「放射能」ってなんやの?「放射線」とどう違うの?などという疑問は、みんながもっていると思います。で、うちの母など「なぁ、『臨界』ってなんやの?」と私に聞くんですが、私だって「なんか知らんけど、ウランって原子はいっぱい集まったら勝手に壊れていくらしい」ぐらいの説明しかできません。一般家庭じゃそんなもんなんですよ。みんな、正確なことなんて、ちっともわかってないんじゃないでしょうか。でも、皆が関心を持たざるを得ない非常に重大な事故だという認識はある。こんなとき夫がいたら、きっとうちの実家では質問攻めにあうと思うんですけどね(~_~;)
とにかく、怖いというイメージでしか捉えられないんですから、風評被害や無責任な噂などが広まるのも無理ないことだと思います。

小さい頃、父に連れられて夜道を歩いていると、お月様がいつまでもついてくるのはなぜかなと不思議でした。まさにそんな子供並みのレベルで、一般に文系人間の科学的な知識は乏しく、理系の人たちから見れば「そんなのジョーシキ」で馬鹿馬鹿しいようなことでも不思議がります。
「臨界」とはなんなのか文系人間に説明しようとしたら、きっとまず「原子って何か知ってる?」から始めねばならないことでしょう。それをいちいち順を追って説明するのは面倒で骨の折れることだと思いますが、周りにそう聞いてくる人がいれば、知っている範囲で説明してあげてほしいと思うんですね。その際は、知識同様、さほど忍耐心もないですから、正確を期した抽象的な説明じゃなくて、多少アバウトでもいいから、実際に見えるものにたとえた説明、視覚的にイメージしやすい説明をしてくださるとありがたいです。私は、こんなときこそ文系人間と理系人間が同じ物事を題材に話ができる時であり、また、話さなければならない時なんではないかと思うんですよね。
ところで、あの〜・・・ほんと、「臨界」って何なんですか?


教えていただきました!

前回の「臨界って何?」という疑問に答えてくださった奇特な方々がいらっしゃいましたので、ご本人の了解を得て紹介させていただきたいと思います。いずれも理系の方です。(太字が引用部分です)

〜*〜*〜*〜

さて、「臨界」について、私は「ウランって原子はいっぱい集まったら勝手に壊れていくらしい」とぼんやり思っていたのですが・・・

天然にあるウランはウラン235とウラン238の二種類あって、一定の量以上集まったら勝手に壊れていくのはウラン235のほうです。そしてその限界の量が「臨界」なのです。
ウラン235は中性子がぶつかると二つに分裂して、その際中性子が2〜3個飛び出します。その飛び出した中性子が近くの別のウラン235にぶつかるとそのウラン235もまた二つに分裂して中性子を出します。
ウラン235が「臨界」を越えて沢山あると、この分裂が次々と起こって止まらなくなってしまいます。
広島に落とされた原子爆弾はこの原理によって作られました。
つまり、臨界事故とは、もう少しで小形の原子爆弾が出来てしまうところだったという大事故だったのです。


ということです。また、ユニークな動画的イメージで説明してくださった方もいらっしゃいました。

私としては、「枕投げ」のイメージで理解しています。
「枕投げ」は今更説明するまでもないでしょう。でもアレが盛り上がるかは部屋の大きさに関係するんです。小部屋では誰かに向かって枕を投げたとしても、ちょっと避けられると、枕はむなしく壁に当たって落ちるか、窓から外に消えて行くだけです。しかし、大部屋だとちょっと事情が違う。狙った相手が避けてもその向こうに別の誰かがいたりするんです。ぶつけられた相手が投げ返した枕も同様にさらに別の誰かに当たり・・・かくして大部屋での枕投げは盛り上がります。
ウランと言う原子は壊れる際に熱や放射線と同時に中性子という「枕」を何個か放出します。ウランの量が少ない時は中性子は他のウラン原子に当たることなく飛び去ってしまいますが、ある程度以上の量が集まると、近くのウラン原子に当たらなくてもその向こうの別の原子には当たるようになります。中性子の当たったウラン原子は壊れると共に、やはり何個かの中性子をばら蒔きます。それが繰り返されることにより、ウラン原子の崩壊が加速的に連続して起きます。
これが臨界という状態と解釈しています。
このとき、連続して大量のウラン原子が壊れる分、大量の熱や放射線が発生するので危険な訳です。


なるほど。
私はひとつ賢くなった気がしますが、みなさんはいかがでしょうか。なんだか、この事故の恐ろしさがより迫ってきた感じもします。でも、それでは一体、もしもこんな事故が起こったときに、不幸にしてそこに居合わせてしまった場合、私たちはどうすればいいのでしょうか。そのことも、合わせて知っておくことが大切だという意見を書いてくださった方もいらっしゃいました。
そう言われれば、そのとおりですね。
そういえば事故のとき、私が疑問に思ったのは、たんに窓を閉めてじっと家にこもっているだけで、よかったのかなってことなんですよ。できるだけ遠くに逃げるとか、そういうことはしなくてよかったのでしょうか。
そう聞いてみたところ・・・

そうですねぇ・・ケースバイケースなので、とても難しいのですが、私なら、まず部屋か家じゅうの窓を閉め切って中に待機でしょうね。放射性物質が外に漏れていたら、それに触れたり吸いこんだりするのが一番こわいですから・・・。
現場から中性子やガンマ線が出てそうなら、できるだけ避けるために事故現場からなるだけ反対側の部屋にこもります。完全に遮断するのは無理ですが、少しでも浴びる量を減らすために。
それと、水道の水が汚染されないうちにすぐに貯めて、浴槽や洗面器にでも確保しておきます。もちろん、ニュースで情報収集します。
ただ、風向きが大きく影響するので、自分のところがそのとき、もし現場より風上であれば、風向きが変わらないうちに早めの避難を考えるかもしれません。
原子力事故で人体や環境に与える放射能の要素は2つあります。事故現場から放射される中性子やガンマ線を浴びる外部被曝と、放射線を出す、放射性物質を吸いこんだり飲みこんだりする内部被曝なんですが、これを区別して考える必要があります。で、私は内部被曝のほうを特に警戒します。
外部被曝は、いわば一過性なので、(場合によりますが)、内部被曝ほどの危険性はないだろうと思うのです。内部被曝は、原因が体内なのでタチが悪く、たとえその場はなんともなくとも、長期にわたりガンや白血病のリスクが高くなったりするのでなかなかこわいと思います。とくに、セシウム137やストロンチウム90といった、寿命が長くてかつ体内に蓄積されやすいものが放出されているとなれば、最大限の警戒をします。窓だけでなく、通気口もガムテープ貼りでしょうね。チェルノブイリでも、炉心が吹き飛ばされて、中にあった大量の放射性物質が環境に放出されました。これが原因で、推定数百万人という人が放射線障害を受けているとも言われてます。本当におそろしい事故です。
ただ、短期間なら遮ることは比較的容易です。コンクリでも素通りする中性子やガンマ線と違って、放射性物質は、大体こまかいチリだったりするので、ようは密閉されていればほとんど遮ることができるわけです。密閉された室内で、ようすをみて、外が汚染されているようなら、汚染がひくまで待ちます。放射性物質の大半は寿命が数日と短いので、1週間も経つとだいぶ減衰します。残ったものも、風雨でしだいに拡散して薄くなってゆくでしょうから。何ヶ月も外に出られないような深刻な汚染はそうそうないんじゃないかと思ってますけど・・


とのことでした。
いつどこで、不幸にしてこういう知識が必要とされる状態になるやもしれませんから、ひとつの参考例として、記憶に留めておかれるのも悪くないかと思います。
いろいろ教えてくださった方々には、ここであらためてお礼を申し上げます(^^)
どうもありがとうございました。

最後に、文系の方からのメールを一部抜粋します。短いですが、これがたぶん一般人のホンネにもっとも近いだろうと思いますので(^^)

この間の原子力関連施設の事故には呆れてものも言えない。
結局、今度は敦賀辺りの原発が爆発しても「考えられない事故が発生した、しかも人為ミスだ」なんて事になって、知らない内にばたばたと、僕達大阪の人間も倒れて行ったりして。
マジでこの国の危うさを痛感した。2000年をこの国でむかえることに対して、すっごく恐怖感を感じているところ。これから、少しづつ缶詰なんかを買っておくことにする。
ほんと、部屋中ペットボトルの山という状況で正月を迎えるはめになるかもね。


いや〜、笑えないですね。私もたぶん缶詰とペットボトル買うと思います(~_~;)
でも、怖いのは、やはり何か意図的な情報隠しが行われるんじゃないかということ。事故が起こると道路だって封鎖されるし、ほんとに深刻な事態になればなるほど、見殺しにされてしまう人々が多くなるんじゃないかと疑ってしまいます。それが恐ろしいですね。

〜*〜*〜*〜

追記

電子技術総合研究所(@筑波)の針谷氏から教えていただきましたが、「東京メトロネット災害情報HP」では、茨城県東海村で発生したJCO東海事業所事故に関する情報がいろいろ事細かに入手できます。 環境放射線モニタリング情報として、針谷さんがお持ちの観測データバックアップへのリンクもありますので、関心のある方は、ぜひご覧になってみてください。



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