ユーリッヒの週末

私は夫に「洗濯スキー」と呼ばれています。
いや、ただたんに洗濯が好きなだけですが。
このゲストハウスの最上階のフロアには洗濯室があります。洗濯機と乾燥機がそれぞれ数台おいてあり、無料で使っていいことになっています。丈夫なビニールひもを張った洗濯物干し場もありまして、そこでは常に暖房が入ってます。いやー、至れり尽せり。
しかし。
この洗濯機の使い方がわからず、最初は困りました。横に扉が開くドラム式のヤツですが、ボタンやら数字や目盛りがやたら細かく設定できるようになっている。ぜんぶドイツ語で書かれているので、使い方がさっぱりわかりません。で、ここに着いてから数日、洗濯できずにいて、「洗濯スキー」な私はイライラが爆発しそうになっていたのですが、ちょうどお向かいの部屋に日本人の研究者がいらしたのです。その方はもうここに何度も来ていて勝手もわかっているし、ドイツ語もできるようなので、親切にいろいろ教えてもらいました。洗濯以外にも、ゴミの分別など、彼に教えてもらった通りにやっています。もう帰国されましたが、ほんと、ありがたかったですね。

こっちの洗濯機は、ただの水から30℃、40℃、50℃とだんだん水温の設定を上げて、最終的には95℃という熱湯で洗えるようになっています。そんな高温で洗うのは丈夫な白いタオルとかリネン類だけということで、普通、服が色落ちしない&洗濯粉がよく溶けるように、私は30℃〜40℃で洗っています。水温を設定して所定の場所に洗剤を投入したら、今度は脱水の回転数を指定するんです。私はだいたい900ぐらいですが最高1500までドラムを回せます。あと、何かオプションがあるみたいですが、日本人的感覚で標準コースと言えるのはそれなので、そこでスタートボタンを押しますと、おもむろに所要時間が表示されます。機種によって一時間から一時間十五分・・・
ハァ?!
なんでそんなに時間かかるの?
日本の洗濯機やったら、その半分やで、ほんま。
なんか、しつこいです、こっちの洗濯機。少ない水でネチネチねちねち洗います。私はたっぷりの水に漬けてぐるぐる攪拌する日本式洗濯機が好きだけど、このしつこいドラム式は、確かによく汚れが落ちる。もう駄目だとあきらめていた夫のチノパンの食べこぼしの染み、きれいに取れました。そのかわり、生地は傷みますけどね。
B氏は日本に滞在していたことがあるそうですが、やはり不満をもっていたそうです。
いわく、「洗濯機に日本語しか書いてない」「汚れがちゃんと落ちない」

思うに、洗濯の頻度が違うんじゃないでしょうか。
私は二日ほど着たら、たいていのものは洗ってしまいますが、実はまだこっちの標準では汚れてなくて、それは「洗いすぎ」なんじゃないかと。
うーん、日本は水が豊富ですよね、だけど、こっちはそうじゃない。そのまま飲める水というのは昔は貴重だったと聞きました。水に対する大切さの感覚が違うので、洗濯機の形態も違った進展を遂げたのでしょうか。

その水ですが、悪くないですよ、少なくともユーリッヒでは。
ミネラル分が豊富なためでしょうか、私には温泉効果があるように感じます。身体を洗うと、肌がつるつるになる。
五年前、東欧旅行でベルリンなどを訪れたときは、水を買うといえばそれは炭酸水でした。ノンガスと言っているのに炭酸水を持ってこられたり、ペットボトルでもわざわざ「ナチュラル」と指定しなければ、炭酸入りのをものを指すのが普通でした。でも、今は変わったように思います。炭酸水よりも普通のミネラルウォーターがたくさん売られていて、悩むことはありません。すばやい水分補給がウリのスポーツドリンクもいろいろあります。

さて、先日の週末、この街の西南にある広い公園&動物園に行ってきました。
公園は一面の芝生で、子供の遊具もあり、ちょっとしたレストランや屋台もあり、花壇はよく手入れされていて、今を盛りと花々が美しく、混み合っていることもなく、いいところでした。
日本人感覚なら、芝生のうえにビニールシートを敷いて、そのうえでお弁当でも食べたいところですが、誰もそんなことはしていませんでしたね。
とにかく、とりどりの植物がきちんと植えられた花壇に感心してました。
動物園というのは、ライオンとか象はいなくて、この街にいる動物を広い敷地に集めたものです。ロバとか、水鳥とか、ブタのようなイノシシのような動物とかですね。派手な檻はありません。通路のいたるところにベンチがあって、休みながら歩きましたが、動物園はやはり臭かったです。
芝生を踏みながら、日本で自分が住んでいる街と、ここユーリッヒと、どちらが住みやすく魅力的だろうかと考えると、一般に、子供が育つ環境という意味ではユーリッヒじゃないかなぁと。でも、私自身にとっては、やはりビジターであればこそ心地良い街なんだと思います。

ほんとうに、このゲストハウスは居心地がよくて、日本の大学や研究所の似たような宿泊施設の事情をいろいろ聞くと、逆にドイツから来ていただくのが申し訳ないような感じです。
広い部屋に充分立派な家具類、掃除はしてくれないけど掃除道具(床ブラシや掃除機など)は揃っている、キッチンには冷蔵庫に食器のフルセット(ワイングラスまであり)に鍋やフライパンなど調理道具一式も揃っている、タオルは一人につき二枚(フェイシャルとバス用)支給で、シーツなどのリネン類とともに、週に一度の交換です。
暖房は各部屋にあって良く効きますが、冷房はありませんので、去年のような異常気象なら夏は地獄でしょうけど。春秋に来るにはもってこいですね。ここもあと二週間もしないうちに引き払うのかと思うとちょっと寂しい。もう二週間ぐらい延長してもいい感じです。でもなぁ、オコタンのことがあるので一ヶ月ぐらいがやっぱり適当(ったって、べつに遊びに来てるわけじゃないので、あくまでも私の気持ちだけの話)。
世話をしてくれている母のメールでは、オコタンもずいぶん元気になったそうです。多分、母にも慣れたというか、なついたんでしょう。去年、イタリアの学会も含めて二週間はなれていたときは、帰国してみるとかなり情緒不安定になってました。何か訴えるように、いつまでもニャーニャーとうるさく鳴いてましたね。私たちの顔を忘れてしまったとか、そういうことはないんだけど、なんか駄々をこねるように鳴いてました。怒ってたんでしょうかね?
あー、ここの暮らしは快適だけど、はやくオコタンに会いたいのもまた事実です。

動物園からの帰り、日曜なので店はたいてい閉まっていて、カフェとかレストランだけが営業してました。ほんと、日曜日って、ここの人たちは何をして過ごしているんでしょう?
だって、平日の月曜から金曜は、スーパーなどを含め、たいていの店は、朝八時に開店、午後七時に閉店ですよ。土曜日は普通の個人店なら午後二時まで。スーパーは午後四時まで。日曜は休み。私みたいに暇な主婦はいつでも昼間にぶらぶら買い物できるけど、仕事をもつ一人暮らしのA君みたいな人はどうなるの?何か買いたいと思っても、ゆっくり選んで買う時間がないじゃない。彼の言うには、「土曜日の午前中に買い物をすませることは大事」なんですと。
日曜日に店が休みって、ほんと不便じゃない?何か買い忘れることだってあるし。
そう思ってたら、やっぱり人間って似たり寄ったりなもので、ガソリンスタンドのコンビニは客で満杯。
いや、ガソリンスタンドにコンビニがあるんですよ。そこでけっこういろんなものを売ってるんです。新聞雑誌のたぐい、花の鉢植えや靴磨きや洗剤、アイスクリームやチョコなど菓子類、卵やバター、ハム、牛乳などの生鮮食料品まで。
いや、他に開いてる店がないからみんな来るんだと思いますけどね。客が行列つくってました。

そうそう、ガソリンスタンドといえば洗車場がありますね。
こだわるようだけど、家の窓ガラスはピカピカに磨いて、雨や雪や夜になるとシャッターまで下ろしてその美しさを保護するくせに、こちらの車が日本人感覚で言うとドロドロに汚れてるのはどういうわけ?
なんか、何ヶ月も洗車してないんじゃない?って感じが普通です。窓ガラスなんか、雨の跡や埃で、尋常じゃなく曇りまくってます。ちょっとこましな格好をしていたら、うっかり車に寄りかかれないですよ、泥だらけなんで。
車の清潔さにこだわり、中も掃除して外もピカピカに磨き上げる日本人とはえらい違い。


マイノリティ

昨日は温度が下がって、昼間でも16℃ぐらいでした。太陽が出ていると暖かいけれど、曇ると寒い感じです。
いつものように買い物に行こうと道を歩いていると、大きなベビーカーに二、三歳の女の子を乗せたお母さんが、私を後ろから追い越して行きました。そのベビーカーは子供と母親が顔を向かい合わせて乗るようになっていて、私を追い越すとき女の子がこちらをジーッと見てました。金髪の可愛い子でした。目が合ったのでニッコリすると、なんだか子供ながらに少し戸惑った様子でした。で、母親に何か言ったんですね。私を追い抜いて目の前を遠ざかりつつあるその声は聞こえませんでしたが、女の子に向かってすばやくシッと唇に指を当てるしぐさをした母親の背中が見えました。

まあ、それだけです。
子供は正直なので、私の顔立ちがこの町のほとんどの人とは違っていることが不思議だったのかもしれないし、何か他に気になることがあったのかもしれません。
カリフォルニアのリバモアでもありましたよ、七歳ぐらいの子供にジロジロ見られたこと。好奇心まんまんで見ているくせに、目が合いそうになると、さっとそらすんです。
外国人の少ない町では、そういう経験しますね。これがパリとかローマだと、地元の人もみんな、各国から(アジアからも)来る観光客に慣れているので、そんなことはないんですが。マイノリティになるって、へんな気分です。これが上海とかだと、喋らなければ地元の人に溶け込めるのに、欧米の片田舎では、このアジアン・フェイスを隠しようがない。

さて、もうこのゲストハウス暮らしもあと十日あまりとなりました。28日にはここを出て、ケルンで二泊する予定なんです。それからフランクフルトまで電車で出て30日午後の便に乗り、帰国は十月一日です。
こう中途半端な滞在だと、こっちで安くて可愛い食器とか見つけても、「やめとこ。どうせ持って帰れないなら、あと少ししかいないし」なんて感じになってきます。できるだけここに愛着を持たないようにしようと思いますね。もしもまた同じように一ヶ月やそこら来る機会があれば、もう勝手がわかっているので何を持っていけばいいかわかるし、初めからもっとエンジョイできるでしょうけど。

私はぜんぜんドイツ語知らなかったんですが、買い物とかで少しは覚えましたよ。
英語と似ている単語があったり、品物の絵や、日本にある同じ商品から、いろんな言葉の意味を推測するんです。スーパーのレシートとか鉄道の切符を見てても大体は直感的にわかりますよ、だって、基本的に書いてある情報は同じですから。
使って便利な言葉は、ダス ビッテ(これ下さい)。メニューでもショーケースのパンでも、指差して言えばオーダー完了。
あと、挨拶。
グーテンターク(こんにちは)、ビーターゼン(さよなら)、チュース(またねー)・・・
全く違う単語も多いけれど、基本的にドイツ語と英語とは似てるし、言語学的には同じ源流から分化したものだなという実感をもちます。

こっちにいくつかCD持ってきて、たまに聴くんですが、日本語か英語かクラシックしか受け付けませんね。というのは、私は香港や台湾にも好きな歌手がいて、彼らのCD(北京語)も持ってきたんですが、やっぱ聴けません。聴いてしまうと頭がこんがらがりますよ、きっと。
中国語は日本語と表現が似ていて、聴くとそっちの源流にスイッチが入るような気がするんです。いったんスイッチが入ると、英語で喋ろうと思っても、それより先に中国語が出てきてしまう。それをまた英語に直すという妙な手間が。
英語のほうにスイッチを入れていることが、源流を同じくするドイツ語を直感的にわかりやすくする私的コツです。どうしても母国語と源流の似た中国語のほうが優先されるんですよね。意識的にシャットアウトしないと。

今日は最後に、最近、ここの暮らしのなかで気が付いた謎を少し書いておきます。

★キッチン関連の謎★

1)流しが狭い。日本のワンルームマンションぐらいの大きさのシンク。
当然、ちょっと大きなフライパンや鍋などはシンクに入りきれませんし、洗うのに難儀します。三角コーナーもないので、野菜くずや残菜などは直接ゴミ箱に放り込んで、そのゴミは各階の階段わきにあるダストシュートから捨てます。シュートの先がどうなっているのか見たことありませんが、ぶんぶんとハエが多いのは、こういう生ゴミの捨て方に問題があるのでは?

2)冷蔵庫がぬるすぎ。最強にしてても、日本の冷蔵庫の弱ぐらいですね。水とかキリッと冷えません。思い起こせば、イタリアのホテルなんかでもそうだったので、ヨーロッパの冷蔵庫はそんなに冷やさなくてもいい構造になってるの?シャワー後にはキュッと冷えたスポーツドリンクが飲みたいんだけど・・・

3)勝手にヨーグルト化する牛乳!買って封を切ってまだ四日目とかですよ?なんか、朝コーヒーに入れようと思ったら、どろっとしてるんです。腐った嫌な匂いはしないんだけど、ヨーグルトみたいに固体化しかかってます。一体なんで?二回買って、二回ともそうだった。
「牛乳、まだいける?」これが、夫と私の朝の合言葉になってますよ。
冷蔵庫の冷え方がぬるいっていうのはわかるんだけど、日本の牛乳ならちょっと考えられない。もしかして、ほんとに最低必要限の低温でしか殺菌してないのかも?

この1)と2)は、「ゲストハウスだからそうなんだ、シンクが小さくて使いづらいんだ、普通の家庭と違って、ここは一時の住まいだからねー」とか思ってましたが、聞く所によると、これが標準だそうです。冷蔵庫も、やっぱり日本に比べると冷えが足りないのも事実らしいです。なんか、このシンクの小ささに、ドイツ家庭の料理にかける情熱不足を感じてしまいました。

MANGAの力

夫がイタリアの学会に出かけました。四泊五日、私はここで一人です。
知っている人もいるし、怖いとか不安さを感じることはないけれど、何してようかなぁ、という感じ。ベルギーのリエージュあたりなら簡単に行けるでしょうけど、日曜なのでどうせ店は休みだし。明日の月曜も、美術館とか閉まってる確率高いし。そろそろ帰国に向けて、体調も整えておかなければとも思うし。無理してしんどくなると自分が困るだけだし。
帰国前にケルンで二泊しますから。
ベートーベンで有名なボンは、かつて西ドイツの首都でしたが、意外なほど人口少ないんですよ。ケルンのほうがずっと多くて、約三倍。百万人ほど。
はじめ、フランクフルトに泊まるつもりだったんですが、こっちの人に言わせれば、「あそこは何も見るとこないよ、ケルンにしたほうがいい」とのこと。私はフランクフルトは空港から街に出たことないので、見てみたかったんですが、ただ都会だというだけで、なんか、ほら、大聖堂とかそういうものがないんじゃない。

やっぱりちょっと暮らすとこんな小さな町はすぐに日常になりますね。
鳴り響く教会の鐘の音も、家々の外観も、日本じゃ手に入りにくい食べ物も、通り過ぎる人々も、みんな非日常の珍しさがあったはずなのに、いつのまにか日常になってる。
安心感とか気楽さはあるけれど、退屈も忍び寄りますね。
海外のどこかにまとまった期間住むとして、そこの暮らしが快適かどうかというのは、もちろんいろんな意味で安全であることが第一だけど、けっきょくは食べ物と気候、娯楽ですかね。
なんか、有名な観光スポットがあるかとか、関係ないでしょ。
ヨーロッパの田舎暮らし、憧れかもしれないけど、
「あー、秋刀魚に大根おろしのっけてポン酢で食べたいよ!」
「なんでもいいから日本語の本が読みたい!」
と思うんでしょうね、突発的に。
そのくせ、日本に帰ったら、
「こんなゴミゴミした町並みは嫌!」
「あー、あのソーセージの味が忘れられない!」
なんてね。

娯楽といえば、こんな小さな町でも、日本の漫画が翻訳されたものが売られてますよ、ちょっとしたコーナーになってて、その名もMANGA。
「遊戯王」「名探偵コナン」「ラブひな」・・・いろいろありましたが、一番面白いと思ったのが、あの映画「リング」を漫画化したもの。誰が描いているのか、見るのを忘れましたが、けっこう映画のシーンに忠実に描かれていて、最後にテレビ画面からズルズルとでてくるアレも同じ。いやー、それが全部ドイツ語なんですよ。あたりまえだけど。
テレビでスタートレックやってても、めぞん一刻やってても、みんなドイツ語。
なんか面白いですよ。日本の家屋や生活習慣なんか全然違うのに、わかるのかなぁと思います。

そういえば、こっちの日本人奥様が、「日本人が欧米というとき、それはアメリカのことで、ドイツの生活なんか知らないし、ドイツ人にしても、日本というものを知らないし、学校で教えもしない。だから、たとえば、『ねえ、日本には○○ってあるの?』という質問をよくされますね」とおっしゃってましたが、ほんとにヨーロッパといっても、暮らし方は各国さまざまですね。私は海外ミステリとか好きなので、一年のリバモア暮らしの後、アメリカンミステリなど読んでると、「TVディナー」だとか、「冷凍ブリトー」「フォーチューンクッキー」などの言葉が指すモノがリアルにイメージできます。だけど、ドイツやイタリアのミステリなどは、そもそも翻訳されてる数が少ないし、たとえ読んでもピンと来ないところがありますね。それだけ、生活を知らないからだと思います。
まあ、知らないことは時に誤解も生むだろうし、もっと関心を持ち合うべきだと思いますが、たとえば隣近所の人が何してるかも知らないのに、ドイツのニュースに関心を持てといわれても、ほとんど無理だろうと。限られた紙面だから、日米同盟の片割れのことにより多くの行数をさくんだろうし。あ、こんどのW杯はドイツで行われますから、そのときは注目されるかもしれませんね。
でも、それよりMANGAの力は偉大だと思うんですよ。
日本の漫画を見て育ったイタリアやドイツの子供たちが、やがて、日本に対する無関心やトンチンカンな偏見などを正してくれないだろうか?という期待がありますね。

さて、前回に引き続き、暮らしのなかで気が付いた謎ですが、
「公園や道端によく大きな木が植えてあって、そこからイガ栗が落ちてくる!」
この木の実は、日本の丸いタワシみたいな栗のイガと違って、外殻はバラのとげみたいなもので覆われています。地面に落ちると簡単に割れます。そのなかには、栗そっくりのものが入ってるんですが、栗じゃないかもしれません。とにかくなんかナッツの類には違いないんですが、人が散歩したり歩いたりするところにこんな木はマズイんじゃ?
風が吹くと落ちるし、あんなものが頭上五メートルとかから落ちてきて、運悪く当たってしまうとかなり危ない気がしますよ。とげですから触ると痛いし。なんでわざわざあんな危険な実のなる木を植えるのか、わかりません。

アイスクリーム対決

今日(20日)は、一日中、風が強くて肌寒い日でした。
窓の外でびゅうびゅう風がうなります。なんか、大阪の空っ風みたいな感じでもなくて、台風の前触れみたいな、そんな感じで吹きますね。かなり強いです。木の葉が頭上から舞い散り、足元からも吹き上がってきます。
今まではあったかかったけど、これからどんどん寒くなっていくんでしょうね。ドイツの冬は日が短く陰鬱で寒さが厳しいそうですから。ま、地方にもよるでしょうけど。

そろそろちょっとしたおみやげ買いに歩きました。
ドイツのブランドで有名なもの。クナイプなんかいいですね。そうそう、ケルンに行ったら、4711本店でオーデコロンを買わなくちゃ。
んー、ドイツの物価は安いと思います。
モノにもよりますけど、食料品は、珍しい輸入のアジアンフードとかそういうの以外は、日本の半額から3分の2ぐらいな感じです。日本円で言うと、牛乳一リットル百円ぐらいとか、鶏肉100gが百円とか。こっちでは鶏もブタも牛も似たような値段ですね、日本のような差はないです。フルーツ味低脂肪ヨーグルト250gが四十円、チーズやハム、ソーセージも種類がたーくさんあって安いです。
でも、魚はタラとサーモンとサバ、ニシンの燻製みたいなのしか売ってませんね。で、肉より高い割に美味しくない。エビは小エビの缶詰はありますが、ブラックタイガーのような立派なのはないし、イカ、タコ、貝類なんかは探してもないです。もしかしたら、フランクフルトのようなもっと大きな街ならあるのかもしれませんが。
野菜、フルーツ類やジュースも日本よりずっと安くて、こんなドイツの気候で、なんでこんな値段?と思ってたら、ざっとスーパーのチラシを見てみると、たとえばパプリカやニンジンはオランダから、トマトやりんごやプルーンはイタリアから、ネクタリンはスペインから、ブドウやイチジクはトルコから輸入してるみたいですね。
なんか、ヨーロッパのモノって、やっぱりヨーロッパでぐるぐる流通してるんでしょう。日本でも中国産のモノや韓国やマレーシア製品などがたくさん流通してるように。

アメリカンブランドは・・・あんまり見ない気がします。
ケロッグのコーンフレークスとか香水や洗剤、あることはあるんですけどね。
ハーゲンダッツが食べたかったんですけど、どこを探してもなかったです。こっちのアイスクリームって、ほんとに小さいばら売りの子供用は別にして、家庭用のは大きいんですよ。いや、トイレットペーパーとかシャンプーなんかでもそうなんですけどね、どどーんと大パック。で、アイスクリームのスタンダードは一リットルです。一パイントじゃなくて。パイント売りはしてません。もうね、お弁当箱みたいな四角い一リットル入り買っちゃったら、それだけで狭いフリーザーの場所とるし、食べ始めは美味しくても、その味に飽きるんですよ。私にはやはりパイント売りがちょうどいいですね。二、三種類おいておきたいし。
でも、一リットルといってもこっちのアイス、イタリアでも感じたことですが、ふわふわしてるんです。中身のギッシリ感がないというか。空気が多くてホイッピーなんです。だから、箱の大きさに対して軽く感じます。ほら、ハーゲンダッツとか手に持つと、レディボーデンなんかとは違う重みをずっしり感じるじゃないですか。あれがない。舌にのせると、妙にふんわりしてる。これは好みの問題でしょうかねー。私はハーゲンダッツ支持者だけど。

あー、うまいアイスが食べたいなぁーと思っていたら、こっちでちょっと高級なアイスといえば、メベンピックなんです。ネッスルが出してるブランドなんですけどね。これは美味しい!
さすがメベンピック様!ふわふわ感も抑えられ、ギッシリと密度もある。さすが〜!
といっても、一リットルで4ユーロもしないです。ええっ、これ五百円で買っていいの?!
美味さに加え、アメリカのハーゲンやベンジェリに匹敵する安さ。
うーん、これが日本に入ってくると、きっと倍以上の値がつくんだろうなぁ。ていうか、小さい箱つくらなきゃ。
いやぁ、ハーゲンダッツvsメベンピック。いい勝負してますね。

時の行き先

思いがけない人からメールをもらいました。
去年、トリエステの学会で一緒だったY君。奥さんも子供さんも見知っています。
彼ら家族もドイツに住んでいるんだけど、ここからは少し遠い場所。ユーリッヒみたいなド田舎じゃなくて、なかなかスマートな都市のようです。
私のサイトを見ていたらしく、キッチンのシンクが小さいワケについて、
「こっちの人は、シンクに水をはり洗剤を投入、そこにお皿をまとめてつけて洗い、なんと水ですすがずにそのまま拭いておしまいだからじゃないでしょうか」
という驚愕のリポートをしてくれましたね。
ひー、信じられない。
自然自然とこだわるわりに、口に洗剤が入るのはいいわけ?
いや、そういえば、もうずいぶん昔になるけど、私がロンドンにホームステイしていたときも、「うちのホストファミリーでキッチンの片付け手伝ってたら、洗った食器をちゃんとすすがずに泡がついてるまま拭いて、皿立てにしまうんだよ、気持ち悪い〜」と言っていた子がいますから、そーゆーものなの?そういえばロンドンのフラットのキッチンも大きなオーブンなんかはついてるのに、流しは貧相だった覚えが。
あれからもう二十年ちかく。ここは進化してないのか??時間が止まってるのか?
ま、このごろは食洗機が普及したのも事実ですが・・・
うーん、クラッシュ&ビルトの日本の街と違い、ヨーロッパの家は古いですから。ローマなんか、五百年まえのアパートに人が平気で住んでるし。新しい便利なシステムを取り入れにくいのではないかしら?風雪に耐える頑丈な石造りも、セントラルヒーティングにしたり、電気や水道の配管工事がけっこう大変そう。ま、お城に住むのも一苦労というわけです。
あと、車の汚れについて、ドイツには「洗車法」なるものがあって、水がもったいないので洗車に水を使うのは禁止なのだ、という噂。これは、ほんとかどうかわかりません、どなたかわかる方、教えてくだされば幸いです。

ああ、そういえば、鍵の謎。というのもあります。
こちらでは、各部屋に鍵がついてます。なんと、衣装棚にも「各扉ごと」についてます。
その鍵が、めちゃクラシック。ほんと、絵本に出てくるような鍵。ほらー、古い映画で鍵穴から部屋をのぞいたりするシーンがあって、私なんか、あんなに見えるのか?鍵穴ってそんな大きくないのに、と不信に思ったりしてましたが、いや、こっちは大きいんですよ、ええ。ばっちり覗けます、鍵穴から。
玄関の鍵は普通にモダンなオートロックのくせに、部屋のドアの取っ手のしたには必ず鍵穴があって、長さ6cmぐらいの真鍮の鍵がささってます。これはドアの両側から開け閉めできます。このゲストハウスだけの特徴でなく、普通のお家でもお手洗いを借りたときに、やはりそういう鍵がささってましたし、街の玩具屋さんでやっぱりお手洗いを借りたときも、そういう鍵を使ってました。だから、わりと普通のことなんだと思います。
なんでこんな面倒なことするわけ?って感じですよ。
ドアをロックしたければ、もっと近代的な鍵がたくさんあるでしょ。どうせ鍵ったって差しっ放しなんだし。たまに外れて落ちたりしますが、それをもって外出するわけじゃなし。
それに、衣装棚の扉の鍵は、それ自体が取っ手と考えなければ、もし鍵がささってなかったら取っ手がないので開けられないんです。こんな変な衣装棚、みたことがない。
そのうえ、このゲストハウスでは、一番プライベートな空間であるはずのバスルームは引き戸になっていて、そこには鍵はついてません。どうもワケのわからないつくりです。
ゲストハウスの内装自体は、そんな古くありません。こんなふうなドアにしたのは、昔からの習慣なんでしょうか??

とにかく、昨夜は風も強くその音で寝苦しく、また、Y君のメールも懐かしく、時がたつのは速いなぁなどと、いろいろ考えながら眠りについたら、朝方、へんな夢を見ました。
私は子猫を拾っています、というか、二階ぐらいの建物のベランダにいたら、外は暗い夕方みたいで、したには猫や犬がうろうろしていて、そのなかから、その薄い茶色のトラ縞の子猫が一生懸命にジャンプしてあがってきたんです。
私はその子猫をバスルームで洗うことしました。可哀想なので室内で飼ってやろうと思って、とりあえずきれいにしようと。オコタンもいるから猫二匹になっちゃうけど、いいかなぁ?なんて考えつつ洗っていると、いつの間にかそれを研究マシーンのM君が隣で見ていて、
「なにやってるんですか」
「いやー、ノミとかついてたら嫌だし、洗おうと思って」
「・・・」
「長いこと会ってないけど、いつ見ても変わらんね」
「そんなことないですよ」
「あんたの部屋って、どんなふう?やっぱり殺伐としてる?(笑」
「部屋にお金かけられないですから。来月、結婚きまってますしね」
「ふーん・・・ええ〜〜〜っっ!!!結婚なんて話あったん?全然知らんかった。うちのダンナ、そのこと知ってる?」
「知らないですよ」
「そうやろな、知ってたら話題になるはずやもん。えーっ、えーーっ、来月なんてもうすぐやん、なんで今まで黙ってたんよ、水くさい!」
「っていわれても・・・」
「いやー、水くさいわ!」
となじっていたら子猫を洗い終え、横にいるのはフッと夫にすりかわり、
「その猫、飼うんか」
とかなんとか。そして日常の会話が続いていく・・・というところで目がさめました。
リバモアとトリエステでの体験と私の妄想とが入り混じってますね(~_~;)

時間は止まらない、止まらない、ずうっと続いていく、どうしようもなく、そして誰もその行き先を知らない・・・
今日のこの夜も、きっといつか懐かしい日になるときがくる。
このユーリッヒ滞在の記憶も、「あんなことがあったなぁ」と、そのエッセンスだけがきっと残っていく。ちょうど去年のトリエステ滞在みたいに。
確かに大聖堂は美しい。
確かに伝統文化は素晴らしい。
フィレンツェに行った時、あまりの街の美しさに、ここで生まれて一生を終えられる人はなんて幸せなんだろうと羨ましく思ったものです。
教会の鐘、中世の絵画、さりげなく安置された彫刻。現代に生きる過去の遺産たち。
森の緑と建物のレンガ色がほどよく調和した地上に降り注ぐ、雲間からのやわらかな日差し。
だけど、留まれない。私はそこに留まれない。
まだ21、怖いもの知らずで優しさも知らなかったころ、パリのルーブル美術館前で出会ったフォトグラファーのタマゴは、私を写して「日本から来たの?これからロンドンにも行くの?へえ、きみは『世界旅行者』だね」と言ったけれど、今はどうしているんだろう。
彼が日本に来る機会はあったかしら?

人生自体が旅のようなもの、とはよく言われるけれど、みんなどんな旅路をたどっているんだろう?
こちらに来る直前に読んでいたのは、「たたり」というクラシックな怪談で、ある種の感応力を持った若い女性が呪われた屋敷に魅入られてしまうというもの。女性作者ならではの心理描写が上手くて、ちょっと切ない後味の、秀逸な古典怪談です(あのキングも絶賛したという)。
そこで、何度も何度も引用される歌詞があって、
「旅は愛するものとの出会いで終わる」
ほんとうに、旅は愛するものとの出会いで終わるのかもしれない。
だって、逆にいえば、人って、旅が終わるというときになってようやく、真実、離れがたく思うものに気づけるという感じがするんです。


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